神の指先を持つ芸術メシャム作家、コンチャック
       取材・撮影       堤大介(国際ジャーナリスト)

・メシャム・パイプとは
 メシャムパイプの素材であるメシャム(MEERSCHAUM)は、日本で海泡石(かいほうせき)と呼ばれている軽石のような白い鉱物のことです。主要産地のトルコ・エスキシェヒル地方では「白い金」(ベヤズアルチン、BeyazAltin)とも呼ばれています。
 メシャムは表面処理をしなくても柔らかな純白の光が美しいですが、透明なワックスを一回から三回ほど掛けて光沢を出すのが普通です。ヨーロッパ人は淡いベージュ色のメシャムパイプを好むことから、淡い茶色のワックスを掛けることもあります。

パイプ作家、セダット・コンチャック氏(在Eskisehir)による作品の一つ

・パイプ作家、セダット・コンチャックの人生
 「神の指先を持つ芸術メシャムパイプ作家」と称せられているセダットさんは、コンチャック・メシャム社に所属するパイプ・デザイナーです。同社の社長は、セダットさんの実姉のナーハン・コンチャックさんです。セダットさんはイギリスの大学の経済学部に、4年間、留学したため、英語が堪能です。
 コンチャック・メシャム社は、エスキシェヒルで最も歴史が長いパイプメーカーの一つです。1934年、セダットさんの父親のエクレム・コンチャックさんが創業し、エスキシェヒルで初めてヨーロッパやアメリカにパイプを輸出し始めました。
 セダットさんは少年時代から夏休みなどの時間を割いて父親のパイプ制作の仕事を手伝ってきました。本格的にパイプ制作の仕事をするようになったのは1974年のことでした。
 このころ、セダットさんは父親に連れられて西ドイツ(当時)へ赴き、パイプ・メッセの見本市で、自分がデザイン・制作したメシャムパイプを出品し、好評を博しました。イギリスでの生活が長いことから、ヨーロッパの人々が好む西洋の雰囲気をトルコ人のパイプ作家として初めて実現したからです。
 1980年には実姉のナーハンさんがコンチャック・メシャム社の経営に参加するようになりました。

・世界のトップ作家に
 現在では、Wφ Larsen(ヴィーキュー・ラールセン)のパイプ作家であるピーターら、世界中の著名パイプデザイナーたちと友人になり、世界のトップデザイナーへ躍り出ました。ドイツ、フランス、イギリス、日本など世界各国のリッチな人々がセダットさんの常客となり、ひっきりなしにお客が訪れています。日本のパイプメーカーのツゲにOEM生産したこともあります。メシャムパイプの分野では、名実ともに世界のトップ作家となったのです。
 セダットさんの自宅はトルコ西部のエスキシェヒル市内にあり、また広いパイプ販売店とワークショップ(パイプ工房)をエスキシェヒルの繁華街に所有しています。撮影と取材は、そのパイプ工房で2005年11月におこないました。

コンチャック・メシャム社が入居しているブユック・オテルのビルの玄関先

コンチャック・メシャム社のショールームとセダットさん

・メシャムパイプの制作工程
 パイプ作家、セダット・コンチャック氏(1953年生まれ)がメシャム・パイプを制作しているところを取材しました。
 メシャム原石を15分間から25分間ほど水に浸しておくと、海泡石はスポンジのように水分を吸って軟らかみを帯びるため、非常に加工しやすい、という特徴があります。小刀でサクサクと削って形を作り、あるいは手彫りでライオンや蛇や鷲などの動物、スルタンや女神の顔、古代ローマの神殿風の装飾などを施すことができます。

ほど良い大きさにカットしたメシャム原石を水に浸しているセダットさん

小刀でパイプのボウルを削ってデザインしているところ。メシャムを彫っているときは座禅のように無念無想になるそうです。
窓の外には美しい川が流れ、そしてモスク(イスラム教の寺院)の尖塔が

電動ドリルでボウルの形を整えているところ

電動ドリルでボウルに火穴を開けているところ

紙ヤスリでボウルを磨いているところ

ボウルの表面にワックス処理を施しているところ(最低でも二回、繰り返す)

ボウルとシャンクの表面を電動機械でバッフィング

ステム(マウスピース)を電動機械で切り出しているところ

完成半ばのパイプの数々

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